今、このページをご覧になっている皆さんは、何となく興味があってという方から、やむにやまれぬ状況に追い込まれている方まで理由はさまざまでいらっしゃることでしょう。あるいは、既に入院予定が決まっていて、参考となる情報がないかどうか、探しておられる最中かもしれません。
私は3月第2週に広尾MCで子宮筋腫核手術を受け、つい最近抜糸を終えたばかりです。この一ヶ月ほどの間、実際に体験し、そこから学んだことが少しでも皆さんのお役に立てばと願い、反省や自責の念を込めて以下に綴りたいと思います。
- ●はじめに--どのくらい理解していますか?ご自分の身体について
- 体験レポートの中には、長年婦人科系疾患に煩わされ、苦しみ、奔走された話が数多く掲載されています。それらをお読みになってこんな風に感じている方はいませんか?「ここに載っている人たちほど自分の月経はひどくないし」「便秘がちで時々尿の出にくいこともあるけれど、生理は毎月順調そのものだから」「婦人科なんて、わたしにとってはきっと縁のないところだわ」自分だけは大丈夫、誰しもそう思いたいもの。またデリケートな部分だけに、内診されるのも嫌だし、できれば行かずに済ませたいと考える気持ちも分かります。私もそうでした。
しかし、そのために子宮筋腫の発見が遅れ、広尾MC初診時には成人の頭大にまで育っていました。20年、否それ以上の歳月を経て大きくなった可能性もあるとのこと。良質のワインなら文句なしにプレミアムものでしょうが・・「よくこんなになるまで放っておいたね」と斎藤先生に言われ、自分自身の身体についてあまりに無知・無関心だったことに気づかされ、愕然としました。
今まで婦人科検診を受ける機会がなかったという方へ。年齢にかかわらず、メディカルチェックを受けられることをお勧めします。何ごともなければそれでよし。筋腫、内膜症、卵巣のう腫…異常が見つかればとにかく“善は急げ”です。手術を受けるかどうかは別として、まずは広尾MCを訪問して、斎藤先生に相談されてはいかがでしょう。「本当に全摘するしかないの?」「切らずに薬で筋腫を小さくするのは?」「塞栓術とか超音波とか、新しい治療法は?」「様子を見ようと言うのは?」etc.
先生との会話の中で驚くべき事実を多々知りました。専門家でない私がそれらの内容をここで説明するのは、差し控えたいと思います。どうぞ、直接伺ってみてください。
- ●自分自身のことだから、自分で納得のいく決断を
- 「非常に大きな子宮筋腫です。全摘しかありません」医師から突然このように告げられたら、あなたならどうされますか?「10人医者がいたら9割がたは全摘を選ぶでしょうね」はい、そうですか。先生がそうおっしゃるなら仕方がないですね。あきらめます…と、簡単に割り切って答えが出せますか? 私にはできませんでした。
妊婦さんであふれかえる外来の、カーテン一枚隔てただけの診察室で、ろくに精密検査もせず、質問に対する適切な回答もなく、後が詰まっているから早く終わりにしてくれと言わんばかりに、「詳しいことは外で看護婦に訊いて」と話を終わりにした地元K市S会病院の産婦人科医。
私は全摘と言われたショックに加え、その不誠実な態度に怒り心頭に達し、きっと他に手立てがあるはずと信じてパソコンにかじりつきで検索し続け、このHPを見つけてすぐ相談のメールを送り、翌日、斎藤先生からのお返事をいただくや初診の予約を入れました。自分自身のことだから、けっして受身にならず、悔いのないよう納得のいく決断を下したいものですね。
- ●入院前--ポジディブにとらえること
- 手術することに決めたなら、くよくよと思い悩まず、前向きに考えましょう。誰だって手術するのは嫌です。痛いのは辛いです。気が滅入ります。でも、このような困難に直面するのはそこから何かを学べというサインかもしれません。
同じ期間を過ごすなら、危機を機会と考え「この際、悪いところを全部治して再出発するぞ」「何でもかんでも体験して知識を吸収してやるぞ」「この経験をきっとこれからの人生に役立てるぞ」くらいの心意気で望まれてはいかがでしょうか。その方がずっと心身ともに楽になりますし、時も短く感じられ、術後の回復も早いような気がします。
予約を入れ、広尾MCからの連絡をひたすら待ちます。1年待ったという方もいる中で、在宅で仕事をしている私はいつでも手術OKの状態で待機していたことから、4ヶ月あまりで手術日がすんなりと決まりました。幸運だったと思います。
- ●疑問は残さず、すっきりとさせて
- 初診、術前検査で通院の際には、どんな些細なことでも遠慮なく質問するようにしましょう。とても手際よく短時間で説明され、診察はあっという間に終了してしまいますので、尋ねたいことを予めメモしておくと良いです。訊き忘れてしまったことは後日電話で問い合わせ、疑問をそのままにしないようにしましょう。
また、院内でリハビリ中の入院患者の方々は同じ道を歩んでこられた大先輩。このチャンスを利用しない手はありません。部屋から出ていられるということは体調が良い証拠ですので、どうぞ気軽に声をかけ、何でも訊いてみてください。術後数日の彼女たちの様子を知り、交流することによって、ぐんと不安が解消され、勇気が湧いてくることでしょう。そして入院の際には、今度はあなたが、次に続く方々への良きアドバイザーになってあげてほしいと思います。
- ●入院前後--当日まで
- 体調管理に気を遣い、風邪などを引かないように努めましょう。患部の痛み以外に苦しいところがあるのは酷ですし、服用する薬との兼ね合いもあるでしょう。それに、術後しばらくは腹筋を使う動作が非常に辛く、くしゃみや咳など日頃の何気ない行為でも腹部に激痛が走ります。
入院時に持参する物については術前検査の日に説明があります。リストアップされたもの以外は病院に用意されていますので、心配してあれこれ持ってくる必要はありません。ひとつだけ補足するならば、腹部がすっぽりとかぶさるよう、下着はマタニティ用のものにした方が良いです。私はLLサイズで代用しましたが、十分ではありませんでした。
個室にはラジカセ、テレビデオ(ビデオの貸し出し有り)が付帯しており、毎朝夕新聞が配られます。私は時間を持て余すといけないと思ってCDとカセットブックを荷物に入れましたが、リハビリに忙しくて聴く暇がなく、ほとんど出番はありませんでした。
手術前日は消化の悪い肉・野菜類を避け、夕食は午後6時までに具のないスープなどで済ませるということになっています。私は昼食までは普通に食べていいものと聞き間違え、それならば力になるものをとトンカツ定食(!?)を食べてしまいました。特に問題は起こりませんでしたが、術前準備で腸を空にしやすくするためにも、指示には従うべきです。
入院後しばらく食べられないなんて、そんなの耐えられるかなと思われるでしょうが、案外、平気なものですよ。手術翌日の晩から食事は始まり、流動食から徐々に形のあるものへと移行していきます。それに広尾MCの献立は、いわゆる“病院食”と違ってバラエティに富み、デザートもついてとっても美味しかったです。
- ●手術当日
- 当日手術を受ける全員が朝8時30分までに入院し、問診、術前の準備を受けたあと、1番目の人から手術室へと向かいます。後の人は個室で家族と共に順番を待ちます。
手術にかかる時間は状況によって変わってくるので一概には言えませんが、私の場合は2時間弱でした。局部麻酔を受けた後、眠ってしまう人もいるようですが、私はほとんど意識がはっきりとしていて、周囲の様子を興味深く見たり聞いたりしていました(途中、大いびきをかいていたという目撃証言あり…)。
患部の感覚はなく、施術中の先生の手元も見えませんので、恐怖感はありませんでした。斎藤先生を中心とするスタッフに全てを委ね、できるだけリラックスして手術に望むのが患者として唯一協力できることでしょう。
- ●リハビリの大切さ
- 手術の翌日、火曜日の昼過ぎに麻酔の管が取れ、ベッドから起き上がってリハビリ開始となります。とはいっても、最初はお腹が痛いわ、気分が悪いわ、すんなり歩けるわけではありません(痛みの感じ方も忍耐力にも当然個人差がありますが)。
歩くようにと執拗にうながす看護師さんを恨めしく思うこともあるでしょう。しかし、この日から数日間をどう過ごすかによって後の回復度は大きく変わってきます。痛いからといって寝たままの状態でずっといると、消化器官の活動が鈍く、便が出なくなりますし、内臓が固まったまま癒着を起こし、最悪の場合、外科にて開腹手術を受けねばならなくなるそうです。ですから、斎藤先生や看護師さんの声かけは、そうならないための警告であって、けっして患者をいじめよう、苦しめようとしているわけではないのです。このことは、是非、覚えておきたいことです。
入院中、体調は日単位、時間単位で変わります。よほど体調が悪い時を除いて、できるだけ個室にこもらず、部屋の外へ出て廊下や階段を歩きましょう。私はよく吐きましたが、ちょっと休んで落ち着いてからまたリハビリを再開していました。上にあがってくるということは消化器官の働きがうまくいっていないのだから、それを助けるには身体を動かして活発化させるしかないとの説明を聞き、納得した途端、気分がずっと楽になりました。
- ●心を開いて接すること
- 独りきりで往復しているよりも、ほかの患者さんと一緒に歩いたほうが気も紛れ、お互いに情報交換もできるので大変有効です。うっかりと聞き落としたことも補い合えますし、熱が下がらない、便が出ないなどの不調は皆同じなのだと知ることで随分と安心できます。
お友達を作りに来ているわけではないという考えの方もいらっしゃるかもしれませんが、同じ6日間を過ごすなら明るく充実していたほうがずっといい。頑なにならずに心を開き、疾病にかかわること以外にもいろいろな話をし合うことで、自分とは違う職業や立場において人生を歩んでいる方々の生き方に触れ、学ぶべきところが多くあったと私は思います。
これは斎藤先生や看護師さんに対しても言えることです。そつなくテキパキと働かれているので、冷たい・愛想がないと誤解しがちです。しかし、人と人との関係は合わせ鏡のようなもの。自分が心を開いて接すれば、おのずと違って感じられることでしょう。
手術の翌日から面会可能となります(午後3時〜午後7時)が、たとえお見舞いに誰も来なかったとしても、寂しいことはありません。そこが広尾MCの良さの一つでしょう。
私は水曜日に一組だけ訪問を受けましたが、病院らしくない入院環境の良さと、術後のあまりの回復の早さにびっくりされました。
- ●退院時
- 土曜日は朝食後、午前9時過ぎから傷口の消毒をし、その後、退院となります。前もって詳しい説明を受けるのですが、帰宅後は自分自身の手で消毒することになりますので、斎藤先生の消毒の仕方と患部の様子をよく観察しておくと良いでしょう。
私は先生の手元にばかり気を取られ、患部に装着された金具がどのようになっているかよく見ていなかったため、自分で初めて消毒しようとガーゼを外した際、金具が外れていると勘違いして大騒ぎし、家族を心配させてしまいました。
また退院後、実家など自宅とは別の場所に滞在される場合には、連絡先を忘れずに告げ、しっかり確認してから退院するようにしましょう。私はその確認を怠ったため、斎藤先生に迷惑をかけてしまいました。
退院時にはお迎えがどうしても必要ということはありませんし、荷物も宅配便で送ることができます。私は家族が来てくれたので荷物を持ってもらい、鶴見駅までタクシーで出、電車に乗って帰宅しましたが、特に具合が悪くなるなどの問題は起こりませんでした。
- ●退院後の生活
- 退院後の状態は人それぞれで、翌週から職場復帰される方や旅行に出かけられる方もいらっしゃるようですが、私は神奈川県内にある実家で抜糸までのんびりさせてもらいました。当初は新幹線で自宅まで戻るつもりでしたが、無理をしなくて良かったと思います。
処方された薬を飲み、傷の消毒をし、重いものをもたない、腹部を激しく動かさない、抵抗力が落ちているので疲れすぎないように、自転車・激しいスポーツは避ける、シャワーは傷が濡れないよう保護して浴びるようにするなどの注意を守る以外は普通に日常生活を送ることができます。
一番気を配ったのは便通で、内臓が癒着しないよう適度に身体を動かし、バランスの良い食生活を腹6、7分目に抑え、ヨーグルト、プルーンなどを摂取し、ゆっくりとよく咀嚼して食べるよう心がけました。
その結果、退院前までは出にくかった便が下剤なしでも毎朝食後、自然に大量に出るようになり、体重も減りました。緊急時には広尾MCにすぐ連絡するのですが、一緒に入院していた仲間たちと退院後もメールなどで連絡を取り合えるようにしておくと、近況を報告しあったり、ちょっとしたことでも訊いたりできるので何かと便利です。
術後3週目の抜糸までの間、週1回、消毒に通院します。5分程度で済む処置ですが、気がかりなことも相談でき、斎藤先生に経過観察していただけるので安心です。抜糸は消毒と同程度の短時間で、患部を保護していた金具類を外して終了します。傷が乾けば入浴もOK、運動や自転車も少しずつ慣らすようにして再開して良いとのことです。
- ●ちょっとお知らせ
- 初めて広尾MCを訪れてから5ヶ月。全てを終えて今ではほぼ元通りの生活に戻りました。日増しに身体が回復してゆく様子が手に取るように分かります。
最初にかかったS会病院で大雑把に見積もられた手術代の10倍。けっして楽に出せる額ではなかったけれど、満足のいく結果に加え、多くのことを学ばせていただき、選択は間違えではなかったと改めて感じています。斎藤先生をはじめ広尾MCのスタッフの皆様と、手術に快く同意し、様々な面で支えてくれた夫、そして療養に協力してくれた両親に心から感謝しております。
ところで、ここでちょっとお知らせです。 私は夫とともにスペイン語―日本語の翻訳業に従事しておりますが、この度、手がけた作品が出版されました。手術の直前に校正が終わり、ちょうど抜糸の頃に発売。偶然とはいえ、何かの縁を感じざるを得ません。
- 『図解:音楽家のための身体コンディショニング』
- エステル・サルダ・リコ著 八重樫克彦・八重樫由貴子訳 山田成監修
音楽之友社 定価2000円+税
本書は、実際に長年音楽家と関わってきた医療の専門家によって、音楽に従事する人々に?身体?という音楽活動における最も重要な道具について基礎知識を増やし、身体力学についての理解を促すことで、音楽家にありがちな姿勢の異常を防ぎ、個々の身体の機能性に基づいた姿勢を作り出す一助となることを目的に書かれた本です。
日頃何気なく行っている無理な姿勢の強制や習慣づけによって引き起こされる弊害、音楽活動に不可欠な身体コンディショニングの獲得・維持のための方法とその実施に際する注意事項、音楽活動の効率を確実にアップさせてくれる、ウォーミングアップ、ストレッチング、調整力トレーニングなど、137にのぼる部位別トレーニングが紹介されています。
さらに、管楽器奏者や声楽家以外には見落とされがちな呼吸や、取り上げられることの少ない精神面(あがり)の問題、レッスンの指針や休憩時間のとり方、健康の規範などの実践的な推奨事項や、エルゴノミックス(人間工学)の観点から音楽家を取り巻く環境についても論じられ、巻末にはそれぞれの楽器演奏者・声楽家にとって最低限必要な10のトレーニングがリストアップされています。
2003年の出版直後から本国スペインはもとより南米でも話題になり、私たちが原書に出会ったブエノス・アイレスでは、アルゼンチン国立音楽院の教授陣がこれを取り上げ、未来の音楽家たちへの指導に役立てていました。また日本語版出版に際し、聖路加国際病院名誉院長で日本音楽療法学会理事長の日野原重明氏(著書『生き方上手』など多数)のご推薦、寄稿をいただいております。
プロ、アマチュアで音楽活動に携わる全ての年齢層の人々のより良い身体コンディションを維持するためのマニュアルとして、また、演奏家を育てる立場にある教育者や音楽家の患者を抱える医療関係者の指針として、さらに音楽家だけでなく、一般の人々にとっても、日々の生活における健康な身体づくりにも有益な参考図書となると考えますので、是非、ご愛読いただければ幸いと存じます。
専門書扱いであるため、一部大手書店(紀伊国屋書店、八重洲ブックセンター、有隣堂書店など)以外では注文取り寄せとなります。音楽之友社ホームページあるいは「楽天」「Amazon.com」「本やタウン」などのインターネット販売も便利です。
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